シンプルな宇宙モデルで方程式を解いてみよう(物質が優勢なとき)

これまでにフリードマン方程式、Fluid Equation、Acceleration Equationという宇宙を取り扱うための3つの武器を手に入れた。

それらは全て微分方程式で、いろんな式をいじくって組み立てたに過ぎない。

今回はそれらを解いてみたいと思う。

できるだけシンプルな宇宙を仮定して、宇宙は平坦\(K=0\)であるとしよう。

最初はある2通りの状況から考えるのがセオリーのようだ。宇宙の中に物質のほうが多い(物質優勢)かエネルギーのほうが多い(エネルギー優勢)かで大きく変わってくるようで、なぜそうなるかはひとまず置いておこう。話を進めていくうちに理解してくるかもしれない。これは僕の期待でしかないが。

まずは物質が優勢な宇宙を考えてみる。さらに宇宙全体に散らばっている原子や素粒子が静かに漂っているイメージで、重力以外の影響がないと仮定しよう。そうすることで以前に求めたFluid Equationがシンプルになる。

Fluid Equationとは

$$\dot{\rho}+3\frac{\dot{a}}{a}\bigg(\rho + \frac{P}{c^2}\bigg)=0$$

のことだった。導出はこの記事を読んでもらいたい。

これはアインシュタインの\(E=mc^2\)という式から宇宙全体がある容器の中に入れられた気体のようなものとして捉えた式である。エネルギーと質量が等しいというアインシュタインの式から導き出されているので、エネルギー保存の法則を表しているらしいが、僕自身それをちゃんと理解できているかどうかは疑わしい。

ともあれ、物質が優勢で宇宙に散らばる粒子がお互いに干渉しないような、動きの静かな宇宙を考えることで、先ほどのFluid EquationのP(圧力)がゼロとすることができる。粒子が止まっているので、宇宙全体に圧力が生じないというのは納得できるところではある。(要再検討案件)

とりあえずそう考えることでP=0とすることができ、さっきの式が

$$\dot{\rho}+3\frac{\dot{a}}{a}\rho=0$$

となる。

とりあえずはこの微分方程式を解いてみることにする。

時間微分を・(ドット)を文字の頭に乗せること(ニュートン記法)で表現していたが、\(\frac{dx}{dt}\)のようにライプニッツ記法に直してみよう。すると

$$\frac{\rho}{dt}+\bigg(\frac{3}{a}\frac{da}{dt}\rho\bigg)=0$$

となる。両辺に\(dt\)をかけて、左辺には\(\rho\)を、右辺には\(a\)をそろえると

$$\frac{d\rho}{\rho} = -\frac{3da}{a}$$

さらに両辺を積分する

$$\int{\frac{d\rho}{\rho}}=-3\int{\frac{da}{a}}$$

$$\ln{\rho} +C =-3\ln{a} +C$$

Cは積分定数なのでひとつにまとめてやっても問題ない。積分の範囲によって定数の値は違ってくるし、大切なのはそれが定数であるということだけだ。

$$\ln{\rho} =-3\ln{a} +C$$

対数の定義から-3はaの累乗に持ってくることができるので

$$\ln{\rho} =\ln{a^{-3}} +C$$

$$\ln{\rho}-\ln{a^{-3}} =C$$

ここでも対数の定義から

$$\ln{\frac{\rho}{a^{-3}}}=C$$

これより

$$\frac{\rho}{a^{-3}}=\rho a^3=C(定数)$$

$$\rho \propto\frac{1}{a^3}$$

これは納得のいく結果である。\(a\)はスケール因子、つまり宇宙のサイズに関係するものが大きくなるにつれて、密度\(\rho\)が小さくなるという関係の式だ。宇宙の中の物質の量は増えたり減ったりしないことを想定しているので、それを含む体積(宇宙)が大きくなれば密度が減るのは当然のことである。

スケール因子\(a\)についてはこちらを読んでみてください。すごくわかりづらいですよね。

ここからもう少し話を進めよう。

現在の宇宙の物質の密度を\(\rho_0\)と置くと

$$\rho=\frac{\rho_0}{a}$$

となり、先ほどの式の定数の部分に\(\rho_0\)が入った形となる。現在の宇宙の物質の密度から時間とともに宇宙のサイズ\(a\)が変化することで、ある時間の密度\(\rho\)が計算できる式になっている。

この式を使い、さらにシンプルな状況としてK=0と仮定するとフリードマン方程式はどのように変化するだろうか。

$$\left( \frac{\dot{a}}{a} \right)^2 = \frac{8\pi G}{3} \rho -\frac{Kc^2}{a^2}$$

$$\frac{\dot{a}^2}{a^2}=\frac{8 \pi G}{3}\left(\frac{\rho_0}{a^3}\right)$$

$$\dot{a}^2=\frac{8 \pi G}{3}\left(\frac{\rho_0}{a}\right)$$

今度はこの微分方程式をいじってみよう。

前と同じようにドット・の形式から\(\frac{da}{dt}\)の形に変える。さらに\(\frac{8 \pi G \rho_0}{3}\)は定数なので代わりに\(A\)と置いてやると

$$\left(\frac{da}{dt}\right)^2=A\frac{1}{a}$$

$$\frac{da}{dt}=A^{\frac{1}{2}}\frac{1}{a^{\frac{1}{2}}}$$

\(A\)も積分定数\(C\)と同じようにどんな操作を加えようが、これが定数である限り\(A\)のままにすることにする。ここで大切なことは定数でない\(a\)と\(t\)の関係性だ。さらに文字を揃えて、両辺を積分する。

$$\int a^{\frac{1}{2}}da=\int A dt$$

$$\frac{2}{3}a^{\frac{3}{2}}+C=At+C$$

$$a^{\frac{3}{2}}=At+C$$

$$a=At^{\frac{2}{3}}+C$$

ここから

$$a\propto t^{\frac{2}{3}}$$

現在のスケール因子\(a\)(宇宙のサイズ的なもの)を1とし(\(a=1\))、現在の時間を\(t_0\)と置くと

$$a(t)=\left(\frac{t}{t_0}\right)^{\frac{2}{3}}$$

と表すことができる。\(t=t_0\)のとき\(a=1\)となる工夫である。

この事実をもとに、フリードマン方程式の左辺の2乗を取ったものに入れてみよう。(この意味は後でわかる)

$$\frac{\dot{a}}{a}=\left(\frac{da}{dt}\right)\frac{1}{a}=\left(\frac{2}{3}t^{-\frac{1}{3}}\right)\left(t^{-\frac{2}{3}}\right)=\frac{2}{3t}$$

繰り返しになるが、宇宙全体に散らばっている原子や素粒子が静かに漂っていて、重力以外の影響を受けないという状況で、エネルギーではなく物質が優勢な宇宙を考えると、Fluid Equationから\(\rho \propto\frac{1}{a^3}\)という結果が得られた。これは宇宙のサイズが大きくなるとともに、宇宙の物質の密度が小さくなるということを示している。当たり前の結果で面白くないかもしれないけれども、ある意味このモデルがうまく機能していると言えるかもしれない。

これを踏まえて、宇宙空間の歪みが少ない\(K=0\)と置いて、宇宙の広がりの速度を表しているフリードマン方程式から\(\frac{\dot{a}}{a}=\frac{2}{3t}\)という結果が最終的に得られた。これから読み取れることは、宇宙は広がり続けるけども、そのスピードはだんだんゆっくりになる。そして重力の影響だけでは宇宙が収縮することはなく、永久広がり続けることを示している。

実は\(\frac{\dot{a}}{a}\)というのは、別の文字で置き換えられる。

それはハッブル定数\(H\)である。

「星が遠ざかる速さ」として\(v\)を使おう。これは地球からの距離\(r\)を使うと、速さは距離の微分で表されるので

$$v=\frac{dr}{dt}$$

である。これをドット(・)記法で書くと

$$v=\dot{r}$$

右辺に\(\left(\frac{r}{r}\right)\)をかけると

$$v=\frac{\dot{r}}{r}r$$

となる。

ここで思い出してほしいのがスケール因子を使って表された距離\(r\)である。詳しくはフリードマン方程式の導出の時にに書いたけれども

スケール因子\(a\)は空間が時間とともに変化する割合で、宇宙のサイズという認識でもよいのであった。実際、式で書くと

$$r=ax$$

となり、Comoving coodinateと呼ばれる\(x\)は空間の目盛りのような役割であった(定数)。ともかく、これを微分すると

$$\dot{r}=\dot{a}x$$

で、\(\frac{\dot{r}}{r}\)を計算してやると

$$\frac{\dot{r}}{r}=\frac{\dot{a}}{a}$$

となるので、星の後退速度は

$$v=\frac{\dot{a}}{a}r$$

となり、これは宇宙の年齢を計算してみたときに使ったハッブルの法則と同じ形である。

数式を比較してやると

$$H=\frac{\dot{a}}{a}$$

となるので、実はフリードマン方程式の左辺から2乗を取ったものはハッブル定数のことだったのだ。ちなみにハッブル定数\(H\)は星の後退速度、つまり地球からどのくらいのスピードで離れていっているかという数式の定数で、星が離れていっているのは宇宙自体が膨らませた風船のように広がっているからで、星の後退速度と宇宙の膨張速度はほぼ同じものだと言って良いようだ。

だからこそフリードマン方程式はハッブル定数\(H\)を使って

$$H^2=\frac{8\pi G}{3} \rho -\frac{Kc^2}{a^2} $$

と書き直せるのだろう。

ハッブル定数の話が入ってしまったが、これでそれぞれの数式のつながりが見えてきたかもしれない。次は宇宙空間がエネルギーが優勢なときどうなるか考えてみよう。

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